今井写真館
『熱海銀座通りに貼られている写真』など、レトロで貴重な写真が所蔵されている。下記に示すように明治時代からの写真を多く保存し、「熱海の歴史」の記録・記憶として大きく貢献している。
2009年1月11日の中日新聞より引用
父 死去、引き継ぐ決意 坪内逍遙が祖父に贈った自筆の掛け軸を手にする4代目の今井真一さん=熱海市で 「熱海の歴史」を示す写真を保管している今井写真館(熱海市上宿町)。明治中期から古里の風景や文人墨客らの姿を撮り続けてきた館主が、4代目になった。3代目の父親が昨年11月に亡くなったためだ。曾祖父ら歴代の写真コレクションを思い出とともに引き継ぐことになり「熱海の“遺産”を守っていきたい」と決意を固めている。 (熱海通信部・水野誠) 4代目は今井真一さん(50)。 今井さんによると、1885(明治18)年発行の熱海古地図に今井写真館の広告が出ており、そのころには既に商売をしていたらしい。店を始めたのは曾祖父の故徳太郎さん。当時数えるほどの民家しかなかった熱海海岸や、熱海御用邸、熱海梅園などを撮った。温泉場として発展しだしたころだ。 大正から昭和の戦後までに熱海を訪れたり、住んだりした文人墨客や政治家を多く撮影したのは、2代目の故真三さん。晩年を過ごした自宅の庭に立つ小説家の坪内逍遙の姿を写している。 「坪内にかわいがられたそうです」。今井さんは祖父から聞いた話を懐かしむ。坪内本人が揮毫(きごう)した掛け軸を贈られた。「一生懸命仕事に打ち込むように」との意味の言葉が墨書されている。「日本酒好きの日本画の巨匠、横山大観からは吟醸酒をもらったことも」 3代目の父利久さんは昨年4月、熱海市制施行70周年を記念し、谷崎潤一郎、志賀直哉、山本有三を撮った写真を市に寄贈した。出版社の依頼で20歳だった1948(昭和23)年、当時旅館だった起雲閣(昭和町)の庭園で組み立て暗箱式の写真機を使って撮影した。 利久さんが写真に添えた説明文によると、庭園にげたを履いて現れた3人のうち志賀と山本は洋服姿で「バランス的に困ったと思った」が、ポーズは直すところがなく「さすがに一流の人物」と振り返っている。 文豪3人を前に「父は緊張して足が震え、何も言えなかったそうです」と今井さん。写真は現在、市が買収して観光文化施設になった起雲閣に展示されている。 写真館にはかつては常時、2、3人の弟子がいたが、現在は家族で切り盛りしている。今井さんは「少子化やデジタルカメラの影響もあり、記念写真だけでは経営は厳しいですが、いろいろ挑戦して貴重なコレクションを守っていきたい」と話している。