和風客間

畳敷き12畳で、上段は4畳、その西側に5畳半の日本間へ連続しています。
タウトのこの和室は伝統に反するいくつかの表現をしています。その一つが畳を十字に交叉して敷く不祝儀の敷き方です。段上家具(階段)のある上段からの海への視線を強調することを目的の為にこうした式方をあえて行ったと推測されています。
床の間の落し掛もまたいわゆる伝統とは異なっています。タウトは落し掛けをあえて鴨居と同じ高で作りことで、他の2室との内法を揃え全体を調和させることを選びました。壁は灰色を帯びた鶯色に塗られています。柱、敷居、鴨居等は檜材で、ベンガラ色漆塗りとなっています。ドイツ人で色彩建築家と言われたタウトならではの彩色といえます。
上段からみると、襖、障子と日本的な空間が構成されているのが良く分かります。「帳場」と言われる張り出しが設けられ、その側面には書見棚が設けられるなど楽しい工夫がなされました。海側の障子4枚はすべて引き込こまれ全開放され海を望めます。この障子の桟は天井の竿縁と同様に猿頬縁で強度と繊細が相まっています。全体照明に当たるものが一切排除され必要に応じて行灯などで明かりをとるように考えられています。