幻の地下室へ

1階の居間から“幻の地下室”とも言われた空間へと階段を下りていくと、タウトにとって日本的シンボルであった竹が技巧を尽くして迎えます。

 

降りたそこには、14本の丸竹が吊られたアーチ状の開口部をみることができます。形は、火灯窓・花頭窓風。
 しかしそのアーチ頂部にはヨーロッパの要石を思わせる木片があり和風と洋風との折衷を見ることができます。日向邸にはこうした折衷スタイルが多くあり摩訶不思議なる魅力の一つです。この竹の開口デザインは採光と通風という実用性も兼ね備えています。

 

その先の小さな階段の手すりは、太竹が曲げられ踏板に突き刺さっています。これはタウトの『アルプス建築』の中に描いた形で林立するガラスの柱を想起させます。

 

竹の手摺りを繋ぎ固定しているのは、垣根に用いられてきた棕櫚縄です。タウトは「曲がった竹を探してきなさい」と言い、言われた日本人で唯一のタウトの弟子であった水原徳言(よしゆき)氏はとても困ったと言い伝えられています。